
のびしろしかない、結成二年コンビ


それぞれ『M-1』2回戦までは行けたけれど…
――おふたりは元々別のコンビやトリオで活動していたんですよね?
もんモン: 僕はハタチからピンで、ちょくちょくユニット組んだりもしながら。『出囃子』に登録している膝小僧お仕置きストしんぺーと「グリーンキャロット」っていうコンビを組んだこともあります。2017年『M-1』1回戦通過、2回戦敗退。半年経たないくらいで解散しちゃいました。そのあと現・おひるのマーメイドのかずぴよと「らくがきピカソ」を組んで、そこに先輩芸人のいでけんが加わって「れぷりか」っていうトリオになって。2021年1月に解散して、5月からまきしと組んで「フランシスカ」です。
まきし: 僕は高校を卒業してから、幼稚園と中学の同級生だったやつと「M&m」っていうコンビを組みました。結成1年目に『M-1』1回戦を通過して。当時の相方に引っ張られて2017年に上京しました。5年間活動したんですが、2020年に解散して。そのあと後輩と組んだりもしていたんですけどうまくいかず、芸人も辞めちゃって。でも半年後くらいに「やっぱりやりたい」って。人を介して知り合いだったもんモンに声をかけて、「フランシスカ」を組みました。

――紆余曲折あったんですね。おふたりの子ども時代についても教えてください。
もんモン: 僕は岐阜の田舎の出身なんですが、小3のときにはもう「芸人になる!」って決めていました。人を笑かしたとき、無防備な笑顔になって心を許してくれるのがうれしくて。それができる職業ってなんだろうって考えたら、「お笑い芸人さんだ」と。中学のころから授業中にオリジナルのネタを書いて。サインも中1のときにつくったのを今でも使っていますね。
――じゃ文化祭でもネタをやったり?
もんモン: はい。高1の文化祭のとき、友達とコンビ組んで、一生懸命ネタ合わせをしてたんですよ。でもその相方が本番5分前に飛んで。お客さんが100人くらいいるのを見て「やっぱ無理だ、ほんとゴメン」って。先生が気を遣って「一緒にやるか」って言ってくれたんですけど、そんなん先生とやったらなんでもウケるじゃないですか。それはイヤで。ひとりで舞台へ出て行きました。
――ひとりで何をやったんですか?
もんモン: 「地球のモノマネやります…地球ぅ!」とか(笑)…アドリブのギャグですね。終わって袖にはけたあと、ひとりで大号泣しました。直前に相方に飛ばれた悲しさと、「俺、お笑いに本気だったんだ」って改めて自分の気持ちを確認できたのとで。「よし、絶対に芸人になれる!」って自信もつきました。あの7分間のことは今でもずっと残ってます。
優しく背中を押したレゲエのオヤジ
――漫才で上手くいくより、もんモンさんにとっていい経験だったんですね。まきしさんはどんなコでしたか?
まきし: どうしよ、僕そんなのないな(笑)。幼稚園のころからオヤジの影響でお笑いは好きで、「お笑い芸人いいなー」とは思ってました。大阪なんで、小学生のころから「お楽しみ会」でネタを適当につくってやったりはして。目立ちたがり屋ではあったんで、高校で演劇部に入って。役者になりたいと考えたこともあったけど、役者の顔じゃないし、噛むし…(笑)。小さいころからうっすら思ってた「芸人いいなー」っていうのを父親に「どう思う?」って相談して。レゲエのDJやってたオヤジは、「わからんけど楽しそやな」って。特におもしろいことができるタイプではなかったけど、おもしろくなりたくて。それで「芸人になりたい!」が将来の夢になりました。
――お父さん、なんだか素敵ですね(笑)。
まきし: ちなみにオカンはレゲエダンサーでした(笑)。お腹ん中にいるとき、ボブ・マーリーを聴かされてたみたいです。


――タイプの違うおふたりですが、漫才での雰囲気はぴったりですよね。
もんモン: まきしとならちゃんと笑いはとれる、っていう感覚は最初からありました。まずはオーソドックスなネタでもいいから、ちゃんと笑いをとりたかったんですよね。まきしのツッコミは強いんで、僕のボケに合っていると思いますね。
まきし: 実際に初めてやったライブ、めちゃくちゃウケたな。もんモンが土台を作って、ふたりで膨らませてっていうやり方も合いますね。
もんモン: 僕は土台とか“パッケージ”とかをつくるのが好きなんです。ぺこぱさんでいう“人を傷つけない漫才”とかミルクボーイさんでいう“行ったり来たり漫才”とか。まきしは“間”を大事にするタイプですね。
まきし: スベりたくないんです、僕は(笑)。

渋谷で路上ギャグをするうちにファンが増えた
――コンビの活動とは別で、もんモンさんは渋谷で路上ギャグもやっているんですよね。
もんモン: 地元の岐阜にいるときから、広場でやってたんです。当時はコンビでトークライブをやってました。そのときの相方とプロになりたかったんですけど断られたんで、ひとりで東京に出てきて。東京に着いた初日、渋谷駅にあった緑の電車の「青ガエル」のところでピンでギャグをやりました。
――初日から!
もんモン: 岐阜と違って40〜50人とか集まってくれて。人に観てもらうのがうれしかったです。最初のほうはお金をもらってなくて。でもある日観てたおじちゃんがチップをくれて。断ったら「対価としてちゃんともらいな」って教えてくれました。今は「もし楽しめたらお気持ちで…」って、チップを受けとるようにしています。
――路上ライブで生計を立てていると聞きました。
もんモン: MAXの日は、朝までやって4万7000円です。でも基本は2,3時間って決めてます。喉を壊しちゃうのもダメなんで。2017年からずっと続けていたら、顔を覚えて声をかけてもらえるようになりました。今はセンター街でシャッターが降りたあとにやらせてもらっています。お店に挨拶周りに行ったりゴミ拾いをして帰ったりしています。
まきし: もんモンは真面目なんで、コロナ禍になったとたんに、消毒用のアルコールとフェイスシールドとちゃんと用意してましたね。
もんモン: お笑いで稼ぎたいんです。今はバイトをせず路上ギャグで生計を立ててますけど、正直安定はしないんで、『出囃子』をがんばりたいです。
まきし: 僕はバイトをまだ辞められないんですよね…。資格(介護初任者研修修了)持ってるんで、グループホームで介護しています、夜勤で。トイレ介助したり、就寝介助したり。
――まきしさん人気そう。辞めたら寂しがるおじいちゃんおばあちゃんも多いかもしれないですね。
まきし: いや、認知症のかたの施設なんで、次に会ったらもう覚えてくれてないんです。結構切ないです。
――最後にメッセージをお願いします。
もんモン: ふたりが楽しんでる姿を観てもらいたいですね。僕らの成長を一緒に見届けてください!
まきし: もんモンが楽しそうにしてるところを観てください。もんモンが楽しいと僕も楽しいんで!

【編集後記/by担当ライター小林】
「新宿・大久保公園でネタ合わせを拝見したり、もんモンさんの渋谷路上ギャグに自然とファンのコが 集まるのを目の当たりにしたり…スタッフ一同、身の引き締まる思いをさせていただきました」
