
衝撃の改名に潜む、憧れのロックスター


名付け親は、
ギターウルフのセイジさん
――まずは一番気になってるところからお聞かせください!何がどうなって「ダーヨシ」から「エクソシストまーくん」に改名したんでしょうか?
エクソシストまーくん(以下、まーくん): よく「永野さんのイタズラ?」って聞かれるんですけど、違うんですよ。この名前は「ギターウルフ」のセイジさんが付けてくれたんです。
――ギターウルフって、ロックバンドの?
まーくん: そうです。もともとは永野さんきっかけでどっぷりハマって、永野さんと野沢くん(虹の黄昏)の3人でよくライブに行ってたんです。それで去年のGWにギターウルフと永野さんがツーマン(*1)やったんで観に行ったら打ち上げに参加させてくれたんです。
(*1): 2024年5月5日、下北沢SHELTERで「ギターウルフ VS 芸人永野」と銘打ったイベント『爆音ベイビーズ』を開催。
まーくん: 最初はめっちゃ恐縮しながら飲んでたんですけど、セイジさん優しいから「名前なんていうの?」「ダーヨシっていいます」「下の名前は?」「まさかずです」「じゃあ、まーくんって呼ぶね」みたいな感じでたくさん話しかけてくれたんですよ。
――憧れのロックスターから…それは震えます。
まーくん: そう、それで「まーくんはどんなネタやってるの?」って聞かれて、建築現場で出会ったおじさんたちをネタにしてますーって言ったら、「憑依型だね!」「エクソシスト!エクソシストまーくんだ!」つって。
まーくん: まじで最初何言ってんのかなと思ったけど、永野さんも「めっちゃ良くない?」って言うし、周りも「明日からエクソシストまーくんでいこう!」ってめちゃくちゃ盛り上がっちゃって。
まーくん: みんな酔っ払ってたのはあるけど、それでもすげぇ感激したんすよ。「エクソシストまーくん」っていう言葉もやけに耳に残るし、それこそ本当にギターウルフの曲にあってもおかしくないような。
まーくん: これ、今日だけの思い出にしたくねえなと思って。「腹くくるか」と。翌朝、マネージャーに「エクソシストまーくんに改名します」ってLINEで送りました。

――マネージャーさんの反応が気になります。
まーくん: 何の説明もなしに「エクソシストまーくんに改名します」だけ送ったから気味悪がられました。
――そりゃそうだ。
まーくん: そこで永野さんですよ。「どうせならエンタメにしよう」って言って、永野CHANNEL(永野さんのYouTube)であの夜を振り返ったあとに改名の発表をさせてもらいました。
――永野さん、めちゃくちゃいい人っすね。
まーくん: まじでそうなんすよ。こういうところであんまり言うと「営業妨害になるからやめろ」って言われるんですけどね。
まーくん: それで、良い機会だから姓名判断をやってみたんです。「エクソシスト」を名字、「まーくん」を名前で。そしたら凶でした。すごくないですか。
――(エクソシストだもんなぁ…)
まーくん: まぁでも憧れの人に付けてもらったし、別に姓名判断なんてどうでもいいか!って。で、そういえばと思って前の「ダーヨシ」も調べてみたら、そっちの方が運気悪かったっていうね。
まーくん: エクソシストまーくんの方がちょっと運気上がってるみたいです。

「ごっつ」から始まる芸人人生
〜Like A Rolling Stone〜
――それでは改めて、芸人になったきっかけをお聞かせください。
まーくん: 学生時代にテレビでやってた「ごっつええ感じ」ですね。一瞬で魔法にかかったような。完全にやられました。やっぱりダウンタウンさんですよ、我々世代は。
――僕も小学生ながらに見てました!最高でしたね。でもそこで「芸人になろう」って決意できるのがすごいなと思います。
まーくん: 高校生の時だったんですけど、当時は勉強もしないで遊んでばっかりで、とにかくダラダラ過ごしてたんです。卒業しても社会に出たくねーなーって感じで。だから「芸人になる」って言ってしまえば社会人やらなくて済むぞと思って。
――ある種”逃げ道”としての選択肢だったと。
まーくん: 今思えばそうかもしれないです。ただ、ここからが長いんすよ。18歳で高校卒業して、芸人になるならNSC(吉本興業の養成所)だろうと調べたらめちゃくちゃ高くて。そんな高い金払って養成所入りたくねぇなーとか思いながら、とりあえずガードマンとか居酒屋のバイトで生活してて。ある程度金が溜まったらまとめて休み取って遊びに行ったり酒飲みまくったり。で、金がなくなったらまたバイトするっていう。
まーくん: そんな感じでダラダラしてたら、あっという間に7年経って25歳になってました。
――あっという間すぎる。その7年間「芸人になりたい」という気持ちはずっとあったんですか?
まーくん: 一応ね、周りにも「芸人になる」って言い続けてたし。さすがにそれでやらないのは無いなーとは思ってました。あと、一緒につるんでたヤツらもどんどん就職して「そろそろヤベーな」っていう焦りも正直。とはいえ「おっしゃ、やるぞ!」の覚悟があったわけでもなくて、「つまんなかったらすぐ辞めよ」くらいの気持ちでJCA(プロダクション人力舎の養成所)に入りました。


――JCA(人力舎の養成所)が最初だったんですね!そこから今の事務所に所属するまでの話も聞きたいです。
まーくん: まず、JCAの卒業直前に相方が就職するっつって辞めて、ちょうどその頃にソニーが芸人部門を立ち上げて、あぶれた同期と組んでそっちに行きました。ソニーでは漫才やってたんですけど、5年くらいでまた解散して。
まーくん: で次に、当時よくライブで一緒だったフラットファイヴ(サンドウィッチマンの前事務所)の芸人と組みたくて誘ったら、「“グレープカンパニー”っていう新しい事務所ができる」って聞いて、今度はそっちに行って…
――解散の度に事務所を移っていったと。
まーくん: ですね。グレープ入った最初の集まりでサンドさんから「名刺にお前らの名前も入るから、生半可な気持ちで解散すんなよ」って声をかけてくれたのは今でも覚えてます。ただ、そのとき組んだ相方とは3ヶ月で解散しちゃったんですけどね。
――ヤバいじゃないですか。
まーくん: そう、今だったら確実にアウトなんですけど、なぜか残れました。ソニーのときもそうだったけど、スルスルスル〜って入れたんです。とにかく全部がラッキーですね。
トークライブで見つけた
自分だけの武器
――まーくんさんと言えば、建築現場のおじさんたちが登場する「労働者図鑑」ですが、いつ頃からこのスタイルでやられてるんですか?
まーくん: 2017年頃ですね。現場のことは完全にバイトとして割り切ってたんで、それまではあんま喋ってこなかったんですけど、浜辺のウルフさんっていう先輩とトークライブやったときに現場のことをネタにして喋ったら、めちゃくちゃウケたんですよ。
――きっかけはトークライブでのエピソードトークと。そこからネタに昇華していったんですね。
まーくん: そうですね。漫談なんてできないと思ってたけど、文字があったらテレビのテロップみたいで伝わるかなとか考えて、フリップ使ってやり始めた感じっすね。ぶっちゃけると、台本が無いのでフリップに書いてる字を見て、思い出しながら喋ってます。
――ある意味フリップが台本みたいな。『ネタパレ』で見たコントのネタもすごく好きでした!他で見たことない、新しいフリップ芸の形だなぁと。
まーくん: ありがとうございます。アレはですね、今までやり続けてきた労働者図鑑がウケなくなってきたときに生み出したネタなんです。
まーくん: 「このまま指くわえてたら死ぬな」と思ってコントやってみたんですけど、やっぱりそんな簡単じゃなくて。コントめちゃくちゃむずいぞ、と。
まーくん: コント師がよくやる「ネタの途中で設定バラしたらウケる」みたいな、そんなのできねぇしなぁと思ったから、潔く「コント!〇〇」ってやってみたんですよ。そしたらそれが超ウケて。
まーくん: 「コント!昔あれだけいた野良犬が一匹もいない」とか。そこだけ超ウケて、あとは全部スベって。「これは何かあるぞ」と思って、そこからフリップとコントを合わせたネタをやり始めた感じです。

盟友・カミナリとの特別な関係
――ネタの話の流れでもうひとつ。「カミナリさんの作家をやられてる」とWikipediaで拝見しました。どんな関係性なんでしょうか?
まーくん: あいつらとは普通に遊んだり、ネタの話をしたり、ずっと仲がいいんすよ。それで、2016年のM-1予選でやつらが行き詰まってた時に「これ、そっちでやっていいよ」って自分たちのコンビのメモを渡したんです。そしたら、そのメモを元に作ったネタが無限大でめちゃくちゃウケたらしくて。そのまま決勝まで行っちゃいました。
――すごい話。
まーくん: まぁほとんどあいつらの発明と料理が上手だったって話ですけど。で、自分が翌年コンビを解散したときに「ちょっと作家やってくれませんか?」って話になったんです。なんか、たくみが勝手に「解散して芸人も辞める」って思ってたらしくて。
――焦ったんでしょうね。「今、この人にいなくなってほしくない」って。
まーくん: 全然辞めないんですけどね。で、M-1決勝行った翌年ってやたら忙しいじゃないですか。そんな中でも、もう一回挑戦したいってことであいつらは頑張ってたんです。でも、忙しすぎて新ネタがつくれないまま、あっという間に準決勝まで来ちゃって。
まーくん: それでたくみから「あのネタやりたいです」って相談されて。コンビで漫才やってた頃のネタなんですけど、当時からえらく気に入ってくれてたし、そこで譲りました。
まーくん: ボケは全部カミナリ仕様に変えてたけど、おれが言ってたツッコミをたくみが決勝でやってるのを見て、なんかダブって見えて。さすがにちょっと泣きそうになりましたね。

すべての芸人へ「健康診断に行け」
――それでは最後に、今後の展望的な話を聞いて終わりたいと思います。
まーくん: 前は「ネタで売れたい」とか「お笑いお笑いした番組に出たい」とかあったけど、もうね、全部出たいです。クイズでもレポーターでも。クイズはちょっとむずいか。とにかく全部出たい。芸能人やりたいな。
――いいっすね、全部貪欲に。
まーくん: あとはアレだ。みんな健康診断行ってくれ!特に同世代の芸人!


――健康診断?
まーくん: アレなんすよ、前に健康診断行ったら「脂肪肝」っていう病気になってて、それを機にダイエットしたらめっちゃ体軽くなって超健康になったんですよ。
――脂肪肝って、中年太りの人がなりやすいアレっすよね?そんなイメージ全然ないので意外です。
まーくん: いやーヤバかったっすよブクブク太って。でも、食い物とか指示してくれるアプリの言う事全部聞いてたら、2ヶ月半で10キロ痩せました。
――2ヶ月半で10キロ!?
まーくん: そう。それでわかりました。とにかくシンプル。肉も野菜もキノコもご飯も、あとビタミンも、偏りすぎずに満遍なく食べる。それだけで本当に体が変わるんすよ。マジで食事が大事。
――バランスの良い食事、当たり前だけどそれが難しいんですよねぇ…
まーくん: これはね、特に同世代の芸人に伝わってほしい。いかに食事が大事か。久保田くん(インデペンデンスデイ)とか、えざおくん(カントリーズ)とか、急に亡くなるケースが続いてるから。怖いんですよ本当に。
まーくん: バランスよく食事するだけでこんなに体調が変わるってことをみんなに知ってほしい。無理しなくても健康になれるから、マジで。声を大にして言いたい。健康、大事!ほんとこれ!
【編集後記】
最後の健康の話、だいぶ割愛しました(本当は10,000字くらい喋ってくれてます)。熱く語ってくれたのにすみません!他にも熱くなれることで「ライブ用にパソコンで動画を作ること」と話してくれました。試行錯誤しながら動画を作るのがとにかく楽しいと。なるほど、どんなことにも楽しみながら取り組んでるのが若さの秘訣か、と妙に納得しました。そしてきっと、そんなご機嫌な人には運が廻ってくると信じてます。お昼のテレビロケとかピッタリだと思うんですよ、まじで。いつかそんな日が来ることを待ちわびながら、今後も応援していきたいです!
