
男女トリオ「モシモシ」結成秘話

 
                        いけ・あき・まぐろ。
「お笑い工房LUDO」で出会うまで
                        ――芸人になろうと思ったきっかけを、いけさんからお聞かせください。
いけ: 小さい頃からバラエティ番組をよく観ていて、特に『めちゃイケ』が大好きでした。それで、高校の部室でたまたま読んだ『べしゃり暮らし』にハマって、高校のときに文化祭で漫才をやったのが最初ですね。
まぐろ: べしゃりぐらしの影響で漫才やってるの面白すぎる。
あきちゃん: スラムダンクを読んでバスケやるみたいな。
いけ: まさにそう。その後はM-1の準決勝やよしもとのライブを観に行くようになって、次第に「自分でやってみたい」と思うようになったので、早稲田大学で「お笑い工房LUDO」に入りました。
――ありがとうございます。次はあきちゃんさん、芸人になろうと思ったきっかけや経緯をお願いします。
あきちゃん: お笑いは普通に好きだったけど、自分がやるものではないと思ってました。それで高校のときに、同級生が”高校お笑い”をやってて誘われたから行ってみたら、ちょっと面白すぎて、そこからぬるっとやり始めました。
――高校お笑いの存在を初めて知りました。高校生でも出れるライブがあるんですね。
あきちゃん: 『レジスタリーグ』っていうK-PRO主催の16~22歳までが出演できるライブがあるんです。大学生でM-1準決勝(2008年)まで行ってた人とか、粗品さんが組んでたスペードとか、超面白い人たちが居て。それで、ライブとか大会に出ていく中で仲良くなったGパンパンダさんに誘われてLUDOに入りました。
――あきちゃんさんもLUDOに。
あきちゃん: 大学は日大なんですけどね。当時、ワタナベが笑学祭という大学生向けの大会を開催していて、サークル仲間のアンゴラ村長(にゃんこスター)と組んで決勝まで進んだら声をかけられたんです。
あきちゃん: 本来なら一番安いコースでも50万円かかるけど、7万円でいいよって言われたんです。
――特待生扱い!すごい。
あきちゃん: 私、お笑いを職業にするつもりはなくて、放送作家とかテレビ局とかで働きたかったんです。ただ、7万円はデカくないですか?だから最初は履歴書のネタにもなると思って養成所に入ったんですけど、すごく楽しかったし「なんかこのまま成功しそうだな」と思ってそのままプロの道を目指しました。
 
                    ――それでは最後、まぐろさんのきっかけや経緯をお聞かせください。
まぐろ: ちっちゃい頃からアイーンで写真を撮るようなお調子者で、お笑いが大好きでした。レッドカーペット、エンタ、イロモネア、めちゃイケ、はねトび…バラエティ番組は全部観てたと思います。
まぐろ: それで、高校3年生のときに生徒会長をやってたんですけど、学祭を盛り上げるために友達と漫才をしたんです。それがすごい楽しくて、大学受験する時に「本当にやりたいことはなんだろうな」って考えた結果、「お笑いだ!」って確信を持てたので、そこで芸人になる決意をしました。
――けっこう強い意志を持って決意したと。
まぐろ: 本当は高校卒業してすぐ養成所に入りたかったんですけど、大学は出てほしいと親から言われて日大に行きました。
まぐろ: 日大のお笑いサークルに入ってたんですけど、LUDOにいた現XX CLUBの大島さん(タイタン所属)から「LUDOのライブにまぐろと出たいけど、うちは外部の人間を出すわけにはいかない。だからLUDOに入ってくれ」って声をかけられたんです。
――すごい気に入られ方。
まぐろ: ありがたいことに。ただ、そういう形で、しかも途中からLUDOに入るのは前代未聞だったみたいで…
あきちゃん: 私の代(まぐろさんの1個上)には「絶対にあいつをLUDOに入れるな!」っていう保守派もけっこういました。意外と陰湿なんですよ、お笑いサークルって。
――よくない陰だ。つまり、みんな「お笑い工房LUDO」で出会ったんですね。
まぐろ: そうです。同じサークルの先輩後輩でした。
 
                        トリオ結成の地、歌舞伎町「夢吉」。
――続いて、モシモシが結成に至るまでの話をお聞かせください。
いけ: 大学卒業後にテレビ制作会社に就職して、社会人1年目のとき、あきから芸人に誘われました。お笑いをやりたい気持ちはあったけど、同じくらい仕事も楽しくて好きだったので、決断できずにズルズルと3年働いてました。
あきちゃん: マジでどっちつかずなんですよ。組むのか組まないのか、3年経ってもハッキリしなくて。さすがにしびれを切らして、Gパンパンダの星野さんを連れて説得に行ったんです。最終的には目の前で「コンビを組みます」っていう誓約書に拇印を押させました。
――先輩の力も借りつつ、半ば強引に。いけさんをそこまで誘いたかった理由は?
あきちゃん: もともと大学お笑い時代に、私といけともう一人でトリオを組んでたんです。
――なるほど!
あきちゃん: 大学時代の3人で正式に「ブレイブストーリー」という名前で活動したんですけど、1年ぐらいで一人抜けて解散しちゃって。
あきちゃn: うちらの形は3人がベストだと思ったから、「じゃあ誰入れる?」って話になって、ちょうどコンビ解散直後のまぐろに声をかけたんです。
まぐろ: 俺は俺で、ひつじねいりの細田さんと「バーニーズ」というコンビを組んでました。
――細田さんと!知らなかった。
あきちゃん: で、まぐろを呼び出そうって話になって。どうせなら昼から飲んじゃうかと。腹割って話せるし。その時に集まったのが「夢吉」です。
 
                         
                    ――夢吉?
まぐろ: 出た!夢吉!モシモシ結成の地。歌舞伎町にある24時間の居酒屋です。
いけ: 名前に“夢”が入ってるのがいいよね。「ここから始まるぞ」っていう感じで。
まぐろ: 名前好きすぎて、「夢吉」っていう新ネタライブやってたな。歌舞伎町のこと”ゆめきちょう”って呼んでたし。
あきちゃん: バカすぎる(笑)。で、その夢吉に「ちょっと飲むからおいでよ」ってまぐろを呼び出して。
まぐろ: なんとなく「そういう誘いの話かな」とは思っていたけど、改めて「組まないか」と言われたときはやっぱり嬉しかったです。
まぐろ: ただ、そこで急に「実はもう一人候補者がいます」って言い出したんですよ。それがマリーマリーのタコスでした。
あきちゃん: 勧誘というより面接でしたね。だから「結果は追ってご連絡いたします」って言って、その日は解散。
いけ: でもたしか、タコスには別の誘いも来てて、相性とか今後のことを考えて「じゃあタコスはそっちで頑張った方がいいね。」ってなったんだよね。で、その後にまぐろと会ったから、ほぼほぼ決まってたっちゃ決まってた。
まぐろ: それは知らなかった。タコスも面白いし、タコスが入る未来も想像できちゃってたから、俺に決まってホッとしたのは覚えてる。
デカくなかった親父の声
――それではここで、ちょっとイジワルな質問を。メンバーに「ここは直してほしい」というのはありますか?
いけ: 僕からいいですか?まぐろになんだけど、ライブで客席が重いときに声量とかキレが落ちるのはやめてほしい。
いけ: 特にまぐろが声張ってなんぼのネタなのに、ウケないと”しぼんでいく”ときがあるから。もうそこは100%でやろうぜ!って思いながら見てます。
――だそうです。まぐろさん、思い当たる節は?
まぐろ: ちょっとあるっすね。「今日は勝てなそうだし、もういいかな」って思うときが。よくないですね。直します…
あきちゃん: あと、まぐろは大事な場面で遅刻する。これも直してほしい。めったにない収録の日とかに限って妙なおっちょこちょいを発動するんです。大井町と大手町を間違えたり。
まぐろ: フジテレビ行くのにりんかい線乗ったはずが湘南新宿ラインに乗って武蔵小杉に向かったりとかね。気をつけます…
――(まぐろさんがしぼんでいく…)
あきちゃん: もう一個。「うちの親父は声がデカい」って言うけど、アレやめたほうがいいよ。
まぐろ: いや、でけーから!親父の声、でけーから!
あきちゃん: 前会ったとき(声)小さかったじゃん。
まぐろ: 違うんすよ、前に山形で仕事があったときに会わせたんですけど、そのときの親父は緊張してたのか、よそ行きの喋り方してて。
いけ: お父さんもかわいそうだよ。全然声デカくないのに誇張されて。
あきちゃん: 別に声が大きいからカッコいいとかないからね。
まぐろ: 本当はデカいのに。悔しいなぁ。
 
                    朝、観葉植物に「おはよう」
――ここからは雑談ベースで。熱くなれること、癒やされることで人間性を深堀りできたら。いけさん、どうでしょう?
いけ: 熱くなれるのは新ネタとマラソンで、癒されるのは料理と観葉植物です。
あきちゃん: えーーー! 何それ!? 知らねえ。料理!?観葉植物??
いけ: 最近は食器にも興味が出てきました。
まぐろ: おばさんじゃん… 観葉植物も。
いけ: 癒されますね。自分だけじゃなくて、人のためにもなってるから。
                                    あき:
                                    奥さんだ。
(*いけさんは2024年『FNS27時間テレビ』のコーナー「100キロサバイバルマラソン」で優勝賞金1,000万円を獲得した直後にプロポーズして結婚)                                
いけ: 徐々に観葉植物も増えてきて、朝「おはよう」って言うのが日課になってます。
――良いって言いますもんね、声かけてあげるの。
まぐろ: なんで真摯に受け止めてるんですか!
――新婚さんですから。しょうがない。次はまぐろさん、熱くなれることをお願いします。
まぐろ: 麻雀ですね。Mリーグ(プロ麻雀リーグ戦)も好きですし、麻雀の繋がりで先輩方と打つ機会も増えて嬉しいです。
まぐろ: 事務所の先輩にインスタントジョンソンのジャイさんがいて、麻雀の王としてMリーグ関連の仕事もしてるので、いつかご一緒したいですね。本当に今、麻雀が一番熱いです。
――仕事に直結するのが一番良い。最後にあきちゃんさん、熱くなれることをお願いします。
あきちゃん: 私はもう、藤井風さんです。 ライブも行ってて、大好きです!まず、才能が素晴らしい。それでいて努力家で、優しい。愛なんですよ、愛。 世界への愛に溢れてるんですよ。いつか単独やって呼べるようになりたい。
――藤井風さんのライブにモシモシが呼ばれて一緒にコント、の方が熱そう。
まぐろ: ユーミンさんのライブにブレイク前のZAZYさんが呼ばれて出演した、みたいなね。
あきちゃん: 藤井風さんがモシモシのことを大好きになるってことか。それヤバい。
まぐろ: そうなると、結果出して有名になるしかない。
 
                    「走・食・馬」。2030年のモシモシ
――ではこの流れで締めに。「2030年のモシモシがどうなってるか」を事前にアンケートで想像してもらいました。いけさんの回答がこちら。
いけ: はい。
――芸人としてはキングオブコント優勝。ランナーとしても全国各地のマラソン大会に引っ張りだこ。家庭も順調、と。
いけ: 記録がどうこうじゃなくて、いろいろなところで走っていたいです。山とか………
いけ: 世界とか。
あきちゃん: 怖っ!「山」のあとに「世界」だって。怖いよ。
まぐろ: 森とか砂漠とかあるだろうに。「世界」って。
いけ: 走るだけじゃなくて泳いでるかもしれない。いろんなフィールドでね。そこはわかんないですけど、乞うご期待ということで。
――目指すは世界のいけ。素晴らしい。キングオブコントでいうと、他のお二人は「決勝進出」と「優勝」と書いてくれました。
まぐろ: 決勝進出は俺が書きました。本当は優勝って書きたかったけど、まだ準決勝にもいけてないから。現実的に。
あきちゃん: 私も最初は「決勝進出」って書いたけど、「私が優勝って書いてあげないと誰が言うんだ」っていう思いで書き直しました。
――言霊を信じましょう。あきちゃんさんは他にも「個人で競馬の仕事を増やしたい」と。僕も競馬やるのでチェックしてたんですけど、凱旋門(2024年)ですごい当て方してませんでした?
あきちゃん: お!よくご存知で。本命1着、相手が2・3着で大的中でした。
――たしか、坂井瑠星(騎手)推しですよね?藤井風さんとどっちが好きとかあります?
あきちゃん: そこは藤井風で。
――即答。
あきちゃん: いやぁでも、坂井瑠星もめちゃくちゃ好きです。競馬も上手だし、初めて顔見たときカッコよすぎて膝から崩れ落ちました。
――イケメンなんですよねー!ありがとうございます。最後にまぐろさん、「地元でやってる食リポの仕事を広げていく」と書いてくれました。
まぐろ: 今は地元・山形の番組でたまにやらせてもらえてるので、彦摩呂さんとか石ちゃんさんみたいに、地方に行って「まぐろさんが来た!」ってなっていけたら嬉しいです。
 
                         
                    ――まぐろさんは他にも「太田プロの同世代でトップを走っていたい」と書いてくれました。事務所で同世代って誰になります?
まぐろ: 青色一号とか、あとはサルベースですね。
――サルベースさん、ちょうどこのあとインタビューの予定です。
あきちゃん: (大きな声で)同世代の中でも、サルベースには負けらんねぇよなぁ!
まぐろ: (大きな声で)でもやっぱり、サルベースと一緒にキングオブコントの決勝出たいなぁ!
あきちゃん: ……(聞き耳を立ててから)全然反応ない。あ、ここカットで大丈夫です。
まぐろ: でも本当に、サルベースは仲間でもありライバルでもあるって感じです。
あきちゃん: 今ようやく若手が揃って来たんで、ここからですよ、太田プロは。
――たしかに、ライブシーンの最前線にいる方々が多い。これは太田プロの時代が来ますね。
まぐろ: そうなんです。その波に乗れるように、まずは賞レースで結果を残す。そして、いずれは俺たちが下の世代に影響を与えられるようになっていきたいです。
【編集後記】
最後に、トリオ名について。自分たちでは決めきれず、結成お披露目ライブで“客席投票”に委ねたところ、あきちゃんがボケ半分で紛れ込ませたカタカナの「モシモシ」がまさかの当選…という経緯があったそうで。なので本人たちは「特に思い入れはない」と笑っていました。でも、個人的にはすごく良い名前だなと思ってます。「もしもし」は、誰もが口にする呼びかけで、声が届いているかを確かめ、会話を始める合図。つまり、誰かとつながるための言葉です。ーー彼らはこれからも笑いで問いかけ続ける。昼の歌舞伎町で始まった夢の先に、吉日が訪れるその日まで。(夢吉に寄せてエモ締め)
 
                    
 
                             
                             
                             
                             
                                     
                             
                                    