「こいつと芸人に!」と決めていた
初めてふたりでやったのは、サンドウィッチマンのコピー漫才
――第一期芸人さんの中で唯一の同級生コンビのおふたり、大学の野球部で出会われたんですよね?
じゅんせー: はい、流通経済大学野球部のチームメイトでした。っていっても、すごく仲良しなふたりってわけでもなかったです。
木谷カレー(以下木谷): じゅんせーは顔がひろくてが野球部以外にもキャンパスライフを楽しんでいるタイプ、僕は真逆。ポジションはじゅんせーが外野で僕はサード。あのときはいちばん遠い存在でしたね。
じゅんせー: ただ、お笑いの話になるとお互い「よくわかってるね」ってなる。サンドウィッチマンさんが大好きっていうのも一緒で。初めてふたりで漫才やったのは、大学3年の年末、野球部の「納め会」(忘年会)だったよな。
木谷: うん。そのときはサンドウィッチマンさんのコピー漫才をして。先輩の名前とか入れながらね。寮でサンドウィッチマンさんのDVDを観ながらネタを僕が文字起こしして、じゅんせーに「ほい」って渡してね。
じゅんせー: で、僕らが4年の「納め会」では僕らは送られる側だったんですが、またふたりで漫才を。そのときはオリジナルネタで。4年のときは文化祭にも出ました。
――おふたりは大学で出会う前からお笑いが好きだったんですか?
木谷: 子どものころから『ドリフ大爆笑』も『(吉本)新喜劇』も大好き、お笑い大好きでしたけど、とにかく野球漬けの毎日でした。小1からずっと野球をやって、高校も大学も野球で入って受験をしたことがないくらい。AKB48全盛期だった高校のとき、男子校の文化祭なんですけど、友達とふたり、ドンキ(ホーテ)で買ったAKBの衣装を着て、野外のステージで8曲踊りました。その友達は今、地元広島で武将の甲冑を着てローカルタレントをやってるみたいです。
――じゅんせーさんはどんな学生でしたか?
じゅんせー: 僕も小学生からずっと野球をやってました。スポーツ科のある高校で、もちろんそこでも野球部で。部活内でイジられたりツッコんだりしていましたね。でも文化祭とかそういう人前で何かするのは絶対にイヤなタイプで。青森県民ってお笑いを観に行く文化がないし、お笑いが身近じゃないんです。あ、でも高2のとき野球部内の出し物で、アンタッチャブルさんの「道案内」の漫才をコピーしたことはありました。引っ込み思案だけど、やると楽しむタイプで。ただ芸人になりたいとは、当時全然思ってなかったです。
「じゅんせーを迎えにきました」
――大学で出会って、卒業後そのままコンビに?
木谷: 僕はそのまま就職せず、養成所へ行くお金もなく、「今日から芸人!」って自分で言って始めました。じゅんせーを誘ったんですけど、断られたんで。知り合いに劇団を紹介してもらって、ピン芸人としてギャグをやってました。
じゅんせー: 僕は卒業後八戸に帰って市役所で臨時バイトをして、そのあと八戸中央青果というところで働くようになりました。農家さんたちとめちゃくちゃ仲良くなって、予定よりも早く社員になれそうなとき、木谷が「芸人になろう」と迎えにきたんです。
――わー、ドキドキしてきました!
木谷: じゅんせーが「芸人になりたい気持ちもあるけど親に言えない」って。だから、僕がお願いしに行きました。
じゅんせー: 中央青果も芸人もどっちも切れなかったんです。一応親には「お笑いやりたい」とは小出しにしていたんですが、本気だとは思ってなかったですね。
木谷: 親に挨拶って話だったのに、なぜかその前にじゅんせーの友達の誕生日会に連れて行かれて(笑)。
じゅんせー: その中にいた親友のザキオってやつが「木谷くん、なんか話があって来たんでしょ?」と振ってくれたんです。
木谷: 「じゅんせーとコンビになりたいから迎えにきました」って僕が言って。そしたらそのザキオさんが「木谷くん、じゅんせーはここにいたらダメだから東京に連れて行ってやって」「連れて帰れなかったら木谷くんもそこまでのやつだよ」って。
――ザキオさん、めちゃくちゃカッコいいじゃないですか!
じゅんせー: いいやつですね。彼も今は東京のIT系で働いてて、ライブにも来てくれてます。
木谷: で、そのザキオさんに発破かけてもらってその翌日じゅんせーのうちに行きました。
じゅんせー: ただ僕の親は木谷が東京から来た理由がまさかそんなこととは思ってなくて、僕の別の親友の店からお寿司を取って歓迎して(笑)。ちょうど東京から帰省していた4つ上の姉が空気を察して「木谷くん、なんか話があるんでしょ?」って議長になってくれました。
木谷: 「じゅんせーくんと芸人になりたくて迎えにきました」ってね。
じゅんせー: 親も最初はびっくりしてましたけど、最終的には「こんなに本気で言ってくれてるのにお前は何をしてるんだ」ってなりまして(笑)。そこからひとりで本気で1か月考えました。
――そこからまた1か月考えたんですね!
じゅんせー: そうですね。中央青果のほうもめちゃくちゃ良くしてもらってたんで。緊張しながら辞める話をしに行ったとき、まさかの社長も昔芸人を目指していたことを知って。応援してくれました。
木谷: そこから、僕のひとり暮らしの吉祥寺の月4万のアパートに。結局5年一緒に住みましたね。
飲みの席にいるふたりを出せたら…
――おふたりがやっていて楽しいネタはなんですか?
じゅんせー: 漫才「ヒーローインタビュー」みたいに動きがシンクロするネタは、僕ららしくて自信を持ってやれています。
木谷: 僕はコントでも漫才でも、僕じゃない役のほうがつくりやすいし、やりやすい。僕のままで出るのがちょっと…キャラをつけたくなって、そういうネタが好きです。ただ、僕らふたりが飲んでいる様子をほかの人が見て「そのふたりが話してる感じがいいよ」と言われることがあるので、それをネタにしていきたいな〜とは思っています。
お笑いも野球も、本気だからやれている
――じゅんせーさんは今、野球選手という顔もお持ちですよね。
じゅんせー: はい、独立リーグの「堺シュライクス」というチームでやらせてもらっています。大阪堺市で寮に入りながら。昨年春の開幕戦でスレンダーパンダとしてふたりで実況解説をやらせてもらったのがきっかけです。それから「独立リーグをひろめたいな」と思うようになって。東京では伊集院(光)さんの草野球チームに入っていて、リーグ戦でめちゃくちゃ調子がよかったんです。それもあって、入団試験を受けさせてもらいました。
木谷: じゅんせーから「試験を受けたい」って言われたときびっくりしましたけど、いつも流れに身を任せるタイプのこいつが自分で決断するなんて初めてなので、「いいよ」と。
じゅんせー: 東京での芸人の仕事も大阪での野球も、両方本気なんでやれているんだと思います。
――最後にメッセージをお願いします!
木谷: 同級生コンビならではの息の合ったところ、いたずら心を楽しんでもらえたらうれしいです!
じゅんせー: 怖くないふたりなので、気軽に声をかけてください!
【編集後記/by担当ライター小林】
「ロケのテーマは『花束みたいな恋をした』。バイトやネタ合わせをしたこともあるという阿佐ヶ谷にて。 おふたりが自然に笑い合っているのを見て、なぜか心臓がギューッとなりました」 撮影協力/前田家