帰りの電車で「あたしンち」。
限界社畜を救ってコンビ結成した話

ツンツクツン万博

所属:グレープカンパニー
結成:2021年11月
  • 内藤孔佑 (1996.7.27)
  • タフガイ (1995.7.3)
インタビュー
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ウケないと終われない──。スベりすぎてプライドに火が灯る

――事前のアンケートをもとに、芸人になるきっかけや経緯について深堀りしていきます。よろしくお願いします!

内藤・タフガイ: よろしくお願いします!

――まずは内藤さんから。中高男子校なんですね?なんというか、意外です。

内藤: 本当ですか?思いっきり男子校のプライドを持ちながら生きてきました。「面白いやつが正義」みたいな学校で、その価値観は人生にけっこう影響を及ぼしているかもしれないです。

――なるほど。アンケートによると、「その中でずっと面白いと言われてきたことが自信になってる」とありますが。

タフガイ: そんなこと書いたの?

――書いていただきました。で、早稲田大学に進学してお笑いサークルの「LUDO」へ。デビューライブでは、4年生も含めて2位を取ったと。すごいですね。

内藤: ありがとうございます。これはもう、自分は相当面白いんだと思いました。通用するなって。ちなみに、その時の1位が今のラパルフェさんで、3位がはしたくさん(ラランドさんのマネージャー)たちのコンビですね。

――すごいメンツ。

内藤: ただ、2位を取ったことで変に目をつけられたんですよ。ネタ見せのとき、ある先輩から「期待してたけど面白くなかったな」って言われて。なんでそんなこと言われなきゃならないんだ、と腹が立ちました。

――先輩としても面白くなかったんでしょうね。

内藤: つまらないにしても言い方があるだろうと。上下関係を見せつけてくる人が好きじゃなかったし、それが許されている「先輩は絶対」みたいな雰囲気が強くて、嫌でしたね。

内藤: それで、どんどんお笑いがつまらなく感じてしまって、結局サークルは2年の頭で辞めました。ここにいる意味も感じなくなったし、もうお笑い自体もいいかなと。

――そこからどんな流れで芸人を目指すのか気になります。

内藤: 大学3年の時に、突然高校の同級生から「お笑いやろう」って誘われたんです。もともと仲良くて面白いやつだったので、まぁ誘われたしやってみるかと。

内藤: それで、フリーライブとかゲレロン(K-PRO主催。エントリー制のバトルライブ)に出たら、信じられないぐらいスベって。3回くらい出て相方は心が折れて普通に就職していきました。

――プロの世界は甘くないぞと。内藤さんは折れなかったんですね。

内藤: そうですね。正直、折れたっちゃ折れたんですけど。スベリ過ぎて。ただ、このまま終わったらさすがにお笑いが嫌いになる気がして。なんか、ウケないと終われないなっていうか「ウケるまでやろうかな」ってそのとき軽く思いました。

――そこで火が付くの、アツい。面白いと言われてきたプライドが許さなかったと。

内藤: それはあると思います。ちゃんとしたネタさえ作れたら、もっとウケると思ってました。

最初は働きながら。土日の趣味として

――それではここからタフガイさん中心のお話を。「お二人の出会いは英語サークルだった」と書いてありますが…あれ、内藤さん英語サークルに入ってたんですか?

内藤: 兼サーしてたんです。お笑いサークルとは違って先輩も良い人が多くて、ガイさんもそのひとりでした。

――なるほど。ところで英語サークルってなんですか?

タフガイ: 英語サークルは、スピーチとかディベートとか、あとは英語劇を大学対抗で競うようなサークルです。内藤とは同じグループだったので、一緒に練習したり公園で大きい声出しながら走ったりしてたら、普通に飲むくらい仲良くなってました。

――1つ上の先輩だけど仲良く。いいですね。タフガイさんはお笑いサークルとか全然入ってないんですね?

タフガイ: 全くです。でもお笑いは好きで、サークルで夏合宿行ったときに、班の代表でオリジナルのネタをやってました!

――どんなやつを?

タフガイ: シュワシュワシュワシュワ、シュワルツネッガー!こういうのをやって夏男になりました!

――なるほど?

内藤: ギャグ以外にも班対抗でネタを見せる時間があったんです。中にはジャルジャルさんのマイナーなネタとかパクってるやつとかいて。小賢しいことやってんなーとか思ってた時に、ちゃんと自分で考えたネタをやってたから、そこはしっかりしてるなーと思ってました。

タフガイ: お笑いは好きだったので。

――その”好き”の原点は覚えてますか?

タフガイ: 小さい頃、家に『ウリナリ』のコントだけを集めたビデオが3本くらいあって、それを繰り返し見てました!

――ウリナリ!懐かしい。話をちょっと進めます。タフガイさんは普通に就職されてたんですよね?デベロッパーでしたっけ?

タフガイ: はい。「土地売ってください!」みたいな営業をしまくってました。常に怒号が飛び交ってるような会社で、ビクビクしながら働いてました。帰りの電車で「あたしンち」を見るのが唯一の癒やしでしたねー。

――そんなときに内藤さんから芸人に誘われたと。

内藤: 誘う前からみんなで遊んだり飲んだりしてたんすけど、なんか会うたびにオジサン臭くなってて。あんなにイケイケだったのに。

内藤: だから、こんなことしててもつまんないすよって、芸人の方が楽しいですよって。そう言って誘いました。

――でもタフガイさんは芸人になりたいわけではなかったんですよね?

タフガイ: 全くなかったです。面白いことは好きだけど、夢すぎるなと思ってました。それでやっていけるのって、ほんの一部の人間だけだし、正直きちぃだろうなって。だから最初は断ってたんですけど、しつこく誘ってくるんですよ。

タフガイ: それで、「仕事やりながら、土日の趣味でいいから」って言うし、たしかに土日寝てるだけだし、それならやってみようかと。

内藤: そんな感じだったんだ。でも、けっこう良い会社入ってたんで辞めないだろうと思ってました。

タフガイ: タフガイは、所属できることになったら仕事を辞めて本腰入れると決めてたので、グレープに受かってすぐ会社に「辞めます」って電話しました。

――簡単に辞めれました?

タフガイ: 怒られながら引き止められました。「他社に行くんだったら他社でやりたいことをうちでやらせてやるから!何がしたいんだ!」みたいに言われて「芸人になります」って言ったら、上司も「芸人か!じゃあお前、いってこい!」ってなりました。

――漢気ある上司。親はどんな反応でした?

タフガイ: 最初、父親はちょっと怒ってたけど、ライブに1回呼んだら「本気っぽいからいいよ」って言われました。

――やけにあっさり。

タフガイ: もともと芸事の方に行きたい気持ちがあったそうで「気持ちはわかるから、本気ならやれよ」という感じで背中を押してくれました。

――すばらしい。内藤さんの親御さんは?

内藤: 最初は…そうですね。なんか向こうから「就活のことで1回話そう」みたいな感じで東京に来たときがあって、居酒屋で飲んでるときに伝えました。

――わざわざ福岡から就活の話をしに来て、芸人になることを伝えたと。それはまた…

内藤: けっこう言われましたね。高校の楽祭とかでお笑いやってるのを親も見てたんで、「高校のレベルとはワケが違うぞ、稼げるわけないだろ」って。

内藤: でも、「仕送りも何ももらわないから、おれの好きにやらせてくれ」と言って説き伏せました。今はすごく応援してくれてます。父親が本名でXやってて、ファンの人が呟いてる感想にいいねしちゃうんすよ。

――めちゃくちゃエゴサしてる!嬉しいんだろうなぁ。

内藤: 母親も、テレビとか全部録画してくれてるみたいで。ありがたいです。

実は1回落ちていた。
事務所に所属するまでの話

――現在の事務所にはどんな経緯で入られたんでしょうか?

内藤: しばらくはケイダッシュさん(ケイダッシュステージ)に通ってました。唯一動画審査があって、しかもライブが土日だけだったので、ガイさんが有給を使わなくても活動できると思って。

タフガイ: 月1回の事務所ライブに向けて、毎週土日に早稲田あたりで会ってネタ合わせしてたよね。

――ちゃんと仕事と両立できてるのすごい。

内藤: 2020年の10月からオーディションに行きはじめて、2021年7月には「うちに来ませんか?」ってケイダッシュから誘われました。でも、そのタイミングでグレープのオーディションも始まったんです。

内藤: 実は、活動し始めた初期にグレープのオーディションを受けて落ちてたんですよ。で、10ヶ月くらい活動して、ネタのストックもできた今ならいけるかもしれないと思って。思い切って「グレープも受けさせてください」って正直に伝えて待ってもらいました。そこでなんとか受かったのでグレープへ、って感じです。

――1回落ちてて、再チャレンジしたと。

内藤: そうなんです。漫才のネタつくって動画送ったら一次は通って。一次とは違うネタ持ってきてくださいと言われたので、前日の夜に作った自信満々のネタをやったけど、めちゃくちゃ落ちました。

内藤: ちなみに二次の会場は稽古場で、行ったらランジャタイさんが普通にネタ見せしてたんですよ。それを見たガイさんが「これくらいならイケるな」とか言ってました。

――おっと?

タフガイ: 違うんです!本当に知らなかったんです!当時、芸人を見るのも初めてで、何か意味わかんないことやっていたので、こんなもんかと。

――すごい、全然フォローになってない。

内藤: なんなら「人気者だからウケるネタだな」まで言ってました。

タフガイ: ちょっと!でもその後、内藤と一緒に行ったライブで「強風で猫ちゃんが飛んでくるネタ」を客席で観たんですけど、それはもう死ぬほど笑いまして。そこで「やっぱりすごい人なんだ」と思いました。

あの日見た「ピッツァマン」のうちわを胸に

――無事に所属が決まって、2023年には事務所の賞レース「ザ・葡萄王」で優勝。続く7月には「ツギクル芸人グランプリ」でピッツァマンが話題に。勢いが止まりませんね!

タフガイ: ありがとうございます。本当に葡萄王はありがたいし、あれでかなり勢いがつきました。

内藤: ピッツァマンはもともと「おもしろ荘」のオーディション用に作ったんです。あのネタ、本当はひとりで踊ってるところがもっと長くて、そこが面白いと思ってたんですけど、おもしろ荘では長すぎたみたいで落ちました。

――そうだったんですね。ツギクルのときの衝撃は覚えてます、「すごい子たち出てきたな」って。みんなやってましたもんね。営業で呼ばれることも増えたんじゃないですか?

内藤: 増えましたね。ありがたいです。ただ、前に地方営業へ行ったとき、ピッツァマンじゃなくて、いま一番やりたいネタを普通にやったんですよ。

内藤: そしたら、ちっちゃい子供が「ピッツァマン」って書いたうちわを持ってて。マジで後悔しました。なにやってんだと。

タフガイ: 帰り際にその子の保護者が「今日のネタも面白かったです」って言ってくれたんです。その時から、ちょっとでもそういう人いるなら、求められてるものをやろうと思いましたね。

――すごく大事な気づき。地方はテレビくらいしかお笑いの接点がないから、「ピッツァマンの人が来る!」って思っちゃうんですよね。

内藤: カミナリさんにも「飽きられようがやり続けたほうがいい」ってアドバイスもらいました。だからずっとやろうと思います。

――そもそも営業ネタがあるってことが素晴らしいですからね。あとひとつ「名前の由来」を聞いておきたいです!「ツンツクツン」ってなんですか?

タフガイ: いろんなワード出して組み合わせてみようって公園で話してたんだよね。

内藤: 「株式会社ドーベルマン」とかパーティーピーポーの感じで「ファンキー空港」とか。カタカナと漢字で合わせようってなった気が。

内藤: それで、僕が「万博」でガイさんが「ツンツクツン」を出して、合わせてツンツクツン万博に。

タフガイ: 完全に語感ですね!芸人始めたての頃、友達からコンビ名聞かれてちょっと恥ずかしかったの覚えてます。売れなさそうな若手っぽすぎて。笑

子供たちのヒーローを目指して

――では最後に「今後の目標」を聞いて締めたいと思います。

内藤: 本当に楽しいだけの子供番組が持ちたいです。笑いとか、そういう複雑なのは一切ない、ただ楽しいだけの。営業先とか小学校行ったときに、子供達のヒーローになりたいです!

――子供番組、いいですね!

内藤: 子供って本当にいいんですよ。純粋にリアクションしてくれるし、本気で楽しんでくれますから。大人は変にセンスを見せようとするけど、子供は何の照れもなく笑ってくれて、それが嬉しいですね。「つまんない」とかも平気で言うけど。

――すごく好きなのが伝わってきます。

内藤: 公園で子供たちと一緒になって遊ぶような、なんかそういうことを芸人として大きな舞台でやってみたいです。

タフガイ: タフガイも子供大好きです!子供向け番組のレギュラーがほしい!

――ふたりとも同じ方向を向いてて素晴らしい。

内藤: おはスタに一時期出させていただいたんですけど、めっちゃ楽しかった。またやりたい。あとひとつ、お笑いが大好きなので、お笑い好きに楽しんでもらえるコントを作って、それがお金になったら嬉しいなと思います。

――お笑い好きによる、お笑い好きのためのコント。見たいです!

内藤: ありがとうございます。うまく言えないですけど、こういうのに共鳴してくれる仲間を増やしていきたいです。

タフガイ: タフガイは曲を出したいです!

内藤: これ、たしかコンビを組むときに言ってたような。「芸人になったらアーティストとコラボして曲を出したい」って言うから、じゃあそれを目標にしましょうよみたいな。僕も矢島美容室とか、とんねるずさんとか好きだったので、やりたいと思ってて。

――いいですね!なんか割と近い将来実現しそうな。ありがとうございます!だいぶ聞きたいことを聞けたと思います。何か言い残していることがあれば。

タフガイ: 全て言った気がします。丸裸です!

【編集後記】

このインタビュー後、中野で行われた子供向けのイベントに出演していただきました。子供たちと触れ合う姿を見て、本当に子供が好きなんだなと改めて実感しました。これからもっと大きなステージで、たくさんの子供たちと触れ合う姿を楽しみにしています!他、載せきれないほどたくさんの話をしてくれたお二人。タフガイさんが人の名前をなかなか覚えられず、一時期スマホの待ち受けをジグザグジギーの池田さんにしていたエピソードだけは残しておきたかったので、編集後記に記して締めさせていただきます。

PROFILE

ツンツクツン万博

所属:グレープカンパニー
内藤孔佑
生年月日:1996.7.27
出身:福岡県小郡市
所属:グレープカンパニー
タフガイ
生年月日:1995.7.3
出身:東京都葛飾区
内藤孔佑
趣味:PCゲームを漁る、脱出ゲーム、謎解き

特技:イラスト

タフガイ
特技:目の二重を一瞬で一重にすることができること、手汗がすごい

資格:宅地建物取引士

  • カメラマン
    杉本大希
    1992年生まれ。フリーランスのフォトグラファーとして主にファッション誌の現場で活動。息抜きはサッカー観戦、好きなジョッキーは和田竜二騎手。
  • ライター
    吉田朋哉
    1988年生まれ。青森県八戸市出身。好きな家系「二代目武道家」の九条ネギラーメン(硬・濃い・多め)