ケンカもネタ合わせも本気すぎるフレッシュ漫才師
北国からの挑戦、小学生のころの原体験
――――まずは、おふたりの生い立ちから教えてください。
柳本文太(以下文太): 出身は北海道で、高校卒業後上京してワタナベの養成所(ワタナベコメディスクール)へ行きました。高校のときの友人に誘われて。同じサッカー部で、レギュラーに漏れた奴らは応援にまわるんですけど、友人は応援団長、僕は副団長でした。
――――北海道から芸人になるために出てくるって結構な決心ですよね?
文太: 元々は芸人になるなんて1ミリも思っていなかったんです。母子家庭だし、就職のことを考えて工業高校へ進学したくらいだし。でも消火栓をつくる会社にインターンへ行ったとき、この仕事を一生続ける自信がないな…と思ってしまって。ちょうどそのとき友人から誘われて決意しました。母にはストレートに、「芸人になるために東京に行きたい」と伝えて。そしたら「いいよ」と。東京へ行きたいんじゃないかと薄々思っていたみたいです。
早瀬とものぼ(以下早瀬): ちあきちゃんね。仲いいよね。
文太: うん、ちあきちゃん(笑)。僕らまーぶんでやっているラジオのなかでも普通にちあきちゃんの話が出てきます。
――――早瀬さんの上京ストーリーも教えてください。
早瀬: 僕は出身が岐阜県で、上京して東洋大へ。大学2年生の春、ワタナベコメディスクールに入りました。芸人になりたいと思ったのは、小3のころの学期末。クラスのお楽しみ会で友達とマツケンサンバ踊ったり、ちょっとしたコントを作ったりして楽しかったのがきっかけです。
文太: 小3でネタ書いてたの? 今26歳で書いてないのに(笑)?
早瀬: ふふふ。
――――どんなコントだったんですか?
早瀬: 「脱毛剤と育毛剤を入れ替えたらお父さんがハゲちゃった〜」みたいな。
文太: かわいい(笑)!
早瀬: ふふ。中3の三者面談で「卒業してよしもとの養成所に行きたい」って言ったら、お母さんと先生が「今どき芸人さんも頭がいい人が多いから、大学までは行ったほうがいいよ」って。養成所へ通いながら大学も卒業したので、そういう意味では先生や親の言うことにちゃんと従ったかんじですね。
トリオからコンビ、コントから漫才へ
――――その養成所でおふたりは出会うんですね。
早瀬: それぞれ別のコンビを組んでいたんですが、養成所ライブに一緒に出ていたしランクがいつも同じくらいだったので、話す仲でしたね。文太に対しては「ハツラツとしたコだな、僕の好きなコントをしているな」という印象です。
文太: 僕から早瀬への印象は、「声が高くて明るくて、キャラのたった人」ですね。
――――それぞれのコンビではどんなネタを?
文太: 僕らは、変な動きや変なワードを使ったネタでした。いちばんウケていたのは「ゲテニア」っていうコント。はんにゃさんの「ズグダンズンブングンゲーム」に近いというか。
早瀬: 僕らは漫才です。「うんてる、うんてる、うんてる、うんてる、うんてるてんりんでん」って言ってからネタを始めていました。“掴み”ですね。コンビ名が「うんてるてんりんでん。」だったんで。
文太: 僕らはカタカナで「マーブン」でした。当時の相方が『マーベル』が好きで、その“マー”と文太の“ブン”を繋げて。
――――その後、どうやってふたりはコンビに?
文太: 養成所を卒業したあと、二組とも事務所に所属できなかったんです。ちょっと落ち込んで僕ら「マーブン」はネタも作らずバイトがメインになってしまって。
早瀬: 僕ら「うんてるてんりんでん。」は養成所を卒業後2.3年くらいで解散してしまいました。文太たちの「マーブン」のコントが好きだったのもあって、僕が入れてもらうことに。トリオで改めて「マーブン」になりました。3年くらいやったのかな。楽しかったですね。
文太: トリオを組んで、早瀬がいた「うんてるてんりんでん。」の良さも加わって、ネタはよくなったんですよ。だけど、3回出場中3回とも「キングオブコント」の一回戦を突破できず、最初から一緒に組んでいた元相方が芸人を辞めて北海道に帰ることになっちゃって。
早瀬: しかも落ち方も良くなかったよね。まー落ちるよなーっていうか。手応えもなかった。
文太: 僕は元相方が辞めるときは一緒に辞めるって決めていたから、一瞬辞めたんです。でもやっぱり後悔しそう…って思って。1ヶ月も経たないうちに、早瀬にコンビを組みたいって電話していました。
――――コンビとして再結成して、なにか変わりましたか?
早瀬: とりあえず、トリオ時代は圧倒的に場数が足りなかったから、今度はとにかくライブにめちゃめちゃ出ようってことで意見が一致したんです。
文太: トリオ時代は月2.3本だったのを、コンビになってからは月20本くらいに。今は30本くらいですね。
早瀬: ライブにたくさん出ると芸人の知り合いも増えるし、先輩からアドバイスをもらえるし、すごくよくなりました。
文太: あとコンビになって一番大きな変化はコントから漫才に変えたこと。早瀬は前のコンビでも漫才をやってたけど、僕はコントしかやっていなかったので。元々漫才をやってみたかったし、早瀬となら漫才をやってみたいな! と。
早瀬: 結果だけ見ると去年の「M-1」は一回戦を突破できたし、少しずつパワーアップできているかな。まだまだですけど。
“見た目”より“人柄”を見せるネタへ
――――容姿や恋愛ネタから別のものへシフトチェンジしているとか。
文太: 早瀬とふたりのコンビになったとき、まずわかりやすくイケメンとブサイクとして容姿ネタを作って、その流れで恋愛ネタに繋げて…っていう作り方をしていました。それがやりたいっていうより、漫才の作り方がわからなかったから手段のひとつとして。でも元々はサンドウィッチマンさんやNON STYLEさんに憧れていたし、もっと王道ネタを作りたいなーと思っていたんです。
早瀬: 恋愛ネタは女のコには人気だけど男子にはあんまり…とか、容姿イジりも時代にそぐわないし…とか。去年の「M-1」でも二回戦ではウケなくなってましたしね。でも二回戦に進めたからこそ、わかったことでもあります。
文太: 今のネタはぼーっとしている早瀬の素の人柄をやりとりのなかで見せられたらいいな〜と。
早瀬: 無理しなくなったので、前よりアドリブとかも入れやすいです。
文太: ネタづくりで結構ケンカするけどね(笑)。
ケンカが多くて、芸人仲間に動画を撮られています
――――あの…今日の取材前にも集合場所でケンカしていました…よね?
カメラマン杉本: 僕がちょっと早めにスタジオに着いたらおふたりが入り口で大声でケンカしていて。最初はネタ合わせをしてるのかなって思ったくらい。ちょっと聞こえたんですが、なんかしょーもないケンカだった気が…。
文太: わはははは! 見られてたんですね。はず〜(笑)! 集合時間より早めについてネタ合わせしようとしたのに、結局ケンカしてネタ合わせの時間が短くなっちゃいました。LINEを送ったとか送ってないとか、現地集合は駅かスタジオかとか、既読つけたら了解って意味だろ、いや違うだろとか。
早瀬: 道路挟んで向かいのラーメン屋さんに並んでる人たちにもめっちゃ見られてたから、結構声出てたんだね(笑)。
――――なのにその直後、差し入れのおにぎりとおかずについて仲良く談笑していましたが…。
文太: そうそう。もう時間ないからネタ合わせしようってなって、収まりました(笑)。
早瀬: 僕らよくケンカするんで、最近まわりの芸人でその様子を撮影するのがブームになってます(笑)。でもお互い全然引きずらないです。
――――安心しました(笑)。そんなおふたりの今後の目標を教えてください。
文太: まずは「M-1」で勝ちたい。ネタで評価されたい。たとえばジャルジャルさんって、一般男性AとBみたいな見た目じゃないですか。特別な見た目や特技じゃなく、ネタで評価されているのってめちゃくちゃカッコイイ。
早瀬: しずるさんもだよね。見た目は普通だけど、テレビ用から賞レース用までネタの振り幅があってすごい。ネタを楽しそうにやっているのもカッコイイし。僕らも見た目にすごく特徴があるわけじゃないので、ネタでちゃんとおもしろいって評価されるようになりたいです。
――――最後に意気込みやメッセージをお願いします!
文太: まず、この『出囃子』は純粋に芸人を応援したいっていう気持ちの結晶でできているサービスだな〜って感じていて、とんでもなく感謝しています。僕はそもそも元相方に誘われて芸人になっただけで、自分に自信があって入ったわけじゃない。だからこそ『出囃子』の月会費を通して応援してくれる人には、心の底から「ありがとうございます! がんばります!」って伝えたいです。
早瀬: そうですね。相方がネタを書いてくれてるんで、『出囃子』で応援してくれる人を増やして、相方の時間とお金を確保させてあげたいです。まあ、僕は一日一回ポエム(下記PROFILE欄のインスタグラム参照)を書ければいいんですけど。あ、ポストカードがライブとオンラインショップで売ってるんで、よかったら買ってください(笑)!
【編集後記/by担当ライター小林】
「取材前にケンカをしていたと聞いて内心ヒヤヒヤしていましたが、始まってみたら和気あいあい。ネタに悩む姿もケンカの内容も(笑)…等身大の若者像を見た気がします!」