第9回まーぶんの主催ライブ〜ひとたび閉幕、また会う日まで〜

2023.07.24
ライブレポ

7月15日。第9回まーぶん主催ライブ「どろんこマイクフィフティーンナイトベイビー(以下D.F.B)」に行ってきました。

このライブは、若手漫才師のまーぶんがM-1を勝ち進むべく、切磋琢磨しながら毎月15日に開催しているライブです。8月にはM-1の1回戦が始まるということで、今回で一旦最終回のD.F.B。昨年からほぼ毎月観に行ってたから普通に寂しい。

今回の記事では、これまでのD.F.Bを振り返りつつ、ライブの肝であるアドバイスコーナーの様子を中心にお届けしたいと思います。

D.F.Bの歴史

毎月新ネタを作っては出してきたまーぶんはもちろん、ライブ自体も進化し続けてきた。今回で最後ということで、これまで出囃子が取材してきた記事と共に、その変化を記しておきます。

<第1回〜第3回>

・まーぶんが新ネタ4本、ゲスト3組が1本ずつネタ

・ネタ終了後はみんなで楽しくワイワイ企画
>>【毎月15日開催】第2回まーぶん主催ライブの裏側に密着!
>>【第3回】まーぶんの主催ライブに行ってモーニング娘。’14のツアーを思い出した。

<第4回〜第5回>

・まーぶんが新ネタ4本、ゲスト3組が1本ずつネタ

・まーぶんのネタ終了後、ゲストによるアドバイスコーナー
>>第4回まーぶんの主催ライブが非常に良かったので伝えたい
>>課題は『人(ニン)』第5回まーぶんの主催ライブに行ってきた。

<第6回〜第8回>

・まーぶんが新ネタ2本と叩き直したネタ2本をやる(ゲストは1本ずつ)

・まーぶんのネタ終了後、ゲストによるアドバイスコーナー
>>時間との戦い。第7回まーぶんの主催ライブに行ってきた。

<第9回(今回)>
・まーぶんが2分ネタを3本、ゲスト4組が1本ずつネタ
・まーぶんのネタ終了後、ゲストによるアドバイスコーナー

D.F.Bに歴史あり、ですね。特に第4回は転機だったんじゃないでしょうか。第4回といえば「ゲストによるアドバイスコーナー」が始まった回です。

ふつうはね、自分たちの主催ライブで新ネタやったら、たとえうまくいかなくてもファンが温かい空気にしてくれると思うんですよ。それなのに新ネタ披露してゲストからボッコボコにダメ出し喰らうって。正気かよって。ただ、それもこれも全ては自分たちが成長するため。「絶対にM-1を勝ち進むぞ」という強い意志がビシビシと感じられて、まぁ他ではお目にかかれない刺激的な取り組みが僕は大好きでした。

オープニングでは、すっかり恒例となった早瀬の「初めてきたよーって人」から始まる来場者アンケート。そのデータをどこかの施設に渡すとかなんとかいう緩いくだり、毎回そこまで盛り上がってなかったけど、その空気感◎。

思えば最初のころはぶんたが緊張しまくってて、それをそのまま「いや〜緊張しますね〜」って言ってライブ後の反省会ラジオで後輩にガッツリダメ出しされてたのも良い思い出。今日のオープニングはすごくスムーズで見やすかった。

▼ゲスト
太陽の小町(事務所の先輩)
プリズムシャワー(事務所の先輩)
K(事情によりイニシャル)
きつね日和(ゲスト最多3回目の出場)

M-1の・ルール変更・爆発Death

まーぶん1本目のネタは『推し活』。趣味がないぶんたに早瀬が推し活を紹介する、というもの。アドバイスするのは、きつね日和とイニシャルKの二組。

鋭い指摘と論理的な考察でおなじみのきつね日和・松本先生が、開口一番切り出した。

松本

2分18秒、爆発してます。

 
そう、今年からM-1予選のネタ時間に関するルールが変更となったのだ。

これまでのM-1予選1回戦では「2分15秒で警告音、2分30秒で強制退場」だった。しかし、2023年から「2分5秒で警告音、2分15秒で強制退場」となった。
※2回戦以降は15秒経過で警告音、30秒経過で強制終了

松本

このルール変更で、より早く”つかみ”をしないといけなくなった。今回からM-1の戦い方が変わってきますよ。

 
つかみとは、登場して一発目にかます最初のボケのこと。文字通り、お客さんの心を掴むために使うそれには、キャラクターやコンビの立ち位置などを早々に伝える役割がある。

初めて見る人に対して、どっちがボケでどっちがツッコミなのか、さらに言うと「どんなボケを、どんなツッコミをする人達なのか」をわからせる非常に重要なもの。つかみが面白いだけでその後のネタの見え方が変わってくる。
(つかみに関しては2本目のネタ後に太陽の小町さんが良い感じにアドバイスをしていたので後述します)

1本目アドバイスと出来事まとめ

・今日の中では3位のネタ
・それを聞いて安堵するイニシャルK
・これで勝負すると言ってたら全力で止めてた
・ぶんたのキャラを知ってる客層じゃないと難しいネタ
・内々のネタはラスタで
・イケメン過ぎてツッコミに説得力がない
・早瀬のイジりに対してのツッコミが見やすいかも
・つかみ案「どーもまーぶんです」「今日もかっこいいね」「やめろ」

肝なのは  ”ニン”が伝わる  つかみかな

2本目のネタは『忘れられないCM』。ぶんたの心に残るCMを早瀬と再現する、というもの。アドバイスするのはプリズムシャワーさんと太陽の小町さん。

ぶんた

CMの説明に時間がかかるし、情景を浮かばせないといけないのがネックだと思っています。

 
冒頭、ぶんたが思うこのネタの課題を切り出したが、ゲストが気になったのはつかみの部分。

安田

つかみがとものぼのキャラに合ってない。2人を面白く紹介するためのつかみだから、早ければ良いってものではない。もちろん早い方がいいけど、ネタ中のキャラに関わってきてないので、意味がない。

つる

面白くないって意味じゃなくてね。言い方ひとつやと思う。とものぼがやってる今のキャラにちょっと乗っかるくらいの感じで言うと「あ、この人はこういう人なんだな」が伝わる。どういう人として見せたいのかを提示してあげられれば、「忘れさせてあげようか」でも大丈夫

ぶんた

なるほど…ありがとうございます。

 
そういえば、以前ゲストから「まーぶんのネタはつかみが遅い」とアドバイスを受けていた。おそらくそれを受けてからいろいろ試したのだろう。たしかにつかみが早くなっていた。けれども、ただ早いだけじゃなく、ふたりの漫才やキャラをそれとなく伝える内容じゃないと意味がないらしい。むずかしいなあ。

アドバイスコーナーはダメ出しばかりではない。正直な意見を出し合う場だから、「あそこ良かったねー!」とか「面白かったねー!」はみんなで褒める。

このネタで言うと、2台の電動キックボードを早瀬が操作するシーンがめちゃくちゃウケた。

早瀬

あのボケはぼくが考えましたー!

 
共演者が大絶賛していたところで嬉しそうに手をあげた早瀬が可愛かった。

2本目アドバイスと出来事まとめ

・プリズムシャワー湯川さんが出した提案が素晴らしかった。
・文「感動するCMがあって〜」早「似たようなCMでもっと感動するの知ってるよ。電動キックボードのやつ」文「電動キックボード?」
・松本先生がキャラを忘れて「キョコロヒー見てます!」とつるさんに言ってた
・みんながアドバイスを早瀬に言う→ぶんた「あいつは聞き上手なだけなので響いてない」
・湯川さん「ぶんた様と組めてることを光栄に思え」→橋本さん「唯一準備してきたセリフ」

そのニンを  活かすも殺すも  腕次第

3本目のネタは『バンジージャンプ』。好きな子にフラれた文太が気持ちを振り払うためにバンジーを勧められる、というもの。

冒頭では、「ぶんたがイケメン過ぎてフラれた事実が入ってこない」という設定に対するアドバイス(?)があった。毒にも薬にもなる、的な話なんですかね。よくある設定すらも共感させないぶんた様の顔面力、さすがです。

ここでもプリズムシャワー湯川さんの提案が光っていた。

湯川

下に爺ちゃん婆ちゃんがいる理由を聞かれて「喜ぶから」だと共感できない。「天国から友達が戻ってくるような感じがして」とかにすると、このバンジーで死んでいった仲間たち、という意味合いも出せて途中で出るやりとりに深みが増す。


さらに太陽と小町・安田さんからは、ネタの入りに関するアドバイスがあった。

安田

M-1の予選は審査員が連続で何組もの芸人を見る。「悩みがあるんで聞いてほしいんですけど〜」のくだりは多いから、流さずにバシッと決めたほうが見栄え良い。まーぶんの良いところだけど、全体的に流してる部分が多いから、決めるところは決めてほしい。

松本

それは僕も思ってました。とものぼさん、いつも流してる。手ぇ抜きすぎっすよ。絶対ちゃんと決めたほうが面白くなります。

安田

あと、本音を言うと出方がもうイヤ。これは事務所ライブのとき注意しようと思ってたんだけど、普段飲みに行ってもこのまんまだからなぁ。矯正するのはちゃうなと思って呑みました。

 
早瀬には周りから愛される独特の空気感がある。それはそのまま早瀬の魅力だが、初めて見る人にどう映るかはわからない。その人(ニン)を武器にできるかどうかも、おそらく漫才師として必要なスキルなのだろう。

3本目アドバイスと出来事まとめ

・2分22秒で爆発by松本先生
・コントinするまで長い
・冒頭の振りに対して後半何もかかってないのが少し残念
・首を持ち上げるボケの意図が分かりづらい
・ボケが点々としていて線になってない
・ツッコミがズレてる
・もっと共感できるツッコミが見たい

ライブ終え  愛し合いされ  喜怒哀楽

こうして、まーぶんがM-1を勝ち進むべく開催してきた新ネタライブ「どろんこマイクフィフティーンナイトベイビー」が終わった。

まずは、8ヶ月間毎月新ネタをつくって披露し続けてきたまーぶんのおふたり、とってもお疲れ様でした!

この8ヶ月で多くの変化があったと思うけど、ただひとつ変わらなかったのは、関わる人を満足させて実りあるライブにしようという彼らの姿勢。その姿を見るために、ラスタ池袋は毎度大盛況でした。ほんとすごい。

自らを追い込みながら毎月新ネタを作り続けてきたぶんた。
開演前すれ違うたび不安そうにネタをぶつぶつと復唱していた早瀬。

彼らの頑張りを見てきたからからこそ、あとはただただ祈るばかり。

ここで少し自分の話を。

出囃子の事業がスタートしたのは2022年の4月からなんすけど、それまでお笑いライブには数えるくらいしか行ったことなかったんですね。だからライブに行くようになってまだ1年そこらなんですが、そのなかで一番見てきたのがまーぶんです。

毎月毎月まーぶんを見に来るお客さんと一緒にライブを見てて「あぁ、すごくファンに愛されてるなぁ」と感じました。出囃子で主催ライブを開催して気付いたことは、ライブにお客さんを呼ぶことがどれだけ大変かということ。SNSで告知したりライブ会場にチラシ置かせてもらっても、ぜーんぜんお客さん来ないの。自分も行ってなかったから何も言えないけど、行くことが当たり前じゃない人にとって「ライブに行くこと」は、そこそこハードルが高い。それこそ毎日のようにお笑いライブがあるから「いつでも行けるし、今回はいいか」ってなってる部分もあると思う。

そんな中でこのD.F.Bに通うようになって、毎回お客さんがたくさん来てて。ほんと凄いな、って。感心と尊敬です。みんながまーぶんの頑張ってる姿を知っているから、応援し続けてくれてる。愛されてるなぁとすごく感じます。

何を言いたいのかまとまりがなくなってしまいましたが、どうか、力の限り勝ち進んで、輝く姿を見せてほしい。それを祈るばかりです。そして今回で一旦終わってしまうD.F.Bだけど、アンコール公演を楽しみにしてます。いちファンとして。

さいごに

最後はライブ終わりのふたりへのインタビューで締めたいと思います。

ーー全9回を終えて、どうですか?

ぶんた

まずは観に来てくださったお客様、そしてゲストの皆様、本当にありがとうございました!正直めちゃくちゃ大変でした。でも皆さまのおかげで全9回の主催ライブ、走り抜けることができました。
 
新ネタももちろん、最初は企画も考えて、ネタも企画も自分達で盛り上げなきゃダメだとプレッシャーをかけて挑んでいました。MC、ネタ、企画、立ち回り、全てが僕たちにかかっている、主催ライブの大変さを身をもって体験できて、本当に成長できました。
 
そしてその中でゲストの方々のモンスターっぷり、芸人としての能力の高さも痛感しました。全てを糧にして今後に活かして行きたいと思います。本当にありがとうございました!

早瀬

初回から9回目までを通して、色々な試行錯誤をして二人でたくさん話し合い、喧嘩もたくさんしました。急激な進化ができたかと言えば、そこまで漫才は簡単ではないですが、一回一回を着実に2人で話し合って、乗り越えて、日々のライブに取り組んでこれたという自信は手に入れられたと思います。
 
周りの芸人にも「頑張ってるね」「面白くなってきたね」と言ってもらえてきました、これからもっと言ってもらえるように努力を結果に繋げていきます!応援してくださる皆さんに、応援しがいのあるお笑い芸人になれるように頑張ります!
 
本当に周りの方々に恵まれているということを実感しました。
一度でもご来場いただいたお客様、出てくださったゲストの方、そして吉田さん、ありがとうございました!

 
ーーいざM-1へ。意気込みを!

ぶんた

M-1のためにこのライブを始めて、やっとこの時期が来ました。全力で頑張ります!!

早瀬

勝つことが応援してくださる皆さんへの恩返しだと思います!!結果が全てじゃないということを言っていただいたり、思ったりすることもありますが、今年は結果にこだわりたいです!悔しさを切り替えて頑張ってきました、これも応援してくださる方々のおかげです。恩返しします!!

この記事を書いた芸人
「出囃子-DEBAYASHI-」
管理人(運営事務局)